ADDAC705 VC Stinggy Filterの解説シリーズ EP.1です。今回はモジュールの全体像と、フロントパネルに並ぶコントロール、そして入出力について順番に見ていきます。
ADDAC705 VC Stinggy Filterは、名機EDP WaspのフィルターにインスパイアされたマルチモードのVCF(電圧制御フィルター)です。通常のフィルターとしての役割に加えて、レゾナンスにかけるディストーションやクリッピングのオプションを備えているのが大きな特徴です。さらにメイン出力は位相を反転でき、LP・BP・NP・HPといった各フィルタータイプごとの個別出力も用意されています。
VC Stinggy Filterとは
VC Stinggy Filterは、ローパス(LP)・バンドパス(BP)・ノッチ(NP)・ハイパス(HP)を切り替えられるマルチモードフィルターです。元になっているEDP Waspのフィルターは、独特の荒々しい歪み感で知られており、Stinggyもその個性を受け継いでいます。
一般的なフィルターと違うのは、レゾナンスの振る舞いをディストーションやクリッピングで積極的にコントロールできる点です。きれいに整ったフィルターというより、音を「色付け」するためのフィルターと考えるとイメージしやすいでしょう。

入力ゲイン(Input Gain)
Input Gainは、フィルターに送り込む信号の量を調整するノブです。入力レベルを上げていくと、より強くフィルター回路を駆動できます。後述のディストーションと組み合わせると、入力ゲインの大小が歪み方にも影響してくるため、音作りの起点になるコントロールです。

フィルター周波数とレゾナンス
周波数(Frequency)
Frequencyノブは、フィルターのカットオフ周波数を手動で設定します。ローパスであればこのノブから上の帯域がカットされ、ノブを回すことで音の明るさが変化します。後述のCV入力と組み合わせれば、LFOやエンベロープなどで周波数を自動的に動かすこともできます。

Q(レゾナンス量)
Qは、カットオフ周波数付近を強調するレゾナンスの量を設定します。Qを上げるほどカットオフ付近にピークができ、フィルターらしいクセのある響きが強まります。Stinggyのレゾナンスはレンジが広く、最大まで上げると自己発振(セルフオシレーション)し、フィルター自体が音源として鳴り始めます。

CVアッテネーター
Frequencyの隣には、入力されたフィルター周波数用CVの効きを調整するアッテネーターがあります。CV入力にLFOやエンベロープをパッチした際、その変調量をここで増減できます。控えめに揺らすのか、大きくスイープさせるのかを、このノブでコントロールします。

レゾナンスのキャラクター: Clipping と Depth
Stinggyのレゾナンスは、2つのスイッチでその振る舞いそのものを切り替えられます。
Clipping スイッチ
Clippingスイッチは、レゾナンスがLEDによって制限されるか、ダイオードによって制限されるかを切り替えます。クリッピングの方式が変わることで、レゾナンスのアタック感や歪み方のキャラクターが変化します。

Depth スイッチ
Depthスイッチは、レゾナンスのかかり方(深さ)をHighとLowで切り替えます。深さが変わると、同じQ設定でもレゾナンスの効き具合が大きく変わります。
ClippingとDepthはそれぞれ2通りの設定があるため、これらを組み合わせると合計4種類のレゾナンスタイプが得られます。実際の聴き比べはEP.2で詳しく扱います。

ディストーションとフェーズ
ディストーション スイッチ
このスイッチをオンにすると、メイン出力の信号にディストーションが加わります。重要なのは、ディストーションがかかるのはメイン出力だけで、後述の個別フィルター出力には影響しないという点です。Stinggyならではの荒々しいキャラクターを引き出すためのスイッチです。

メイン出力のフェーズ反転
このスイッチでメイン出力の位相を反転できます。メイン出力と個別出力をミキサーで混ぜる際に位相を反転させると、特定の周波数が打ち消し合い、より多彩なフィルター特性を作り出せます。この活用方法はEP.2のミックス編で実際に試します。

入力と出力
シグナル入力
フィルターに通したい音声信号は、シグナル入力に接続します。シンセのVCOやドラム、サンプルなど、フィルターをかけたい音をここに入れます。

メイン出力
メイン出力は、選択中のフィルタータイプの音が出力される基本の出力です。ディストーションやフェーズ反転といったStinggy独自の機能が反映されるのは、このメイン出力です。

個別フィルター出力(LP / BP / NP / HP)
メイン出力とは別に、LP・BP・NP・HPそれぞれの個別出力が用意されています。これらはディストーション回路を通らない素のフィルター出力で、複数のフィルタータイプを同時に取り出してミックスしたり、別々の行き先へ送ったりできます。

EP.1はここまでです。ADDAC705 VC Stinggy Filterは、マルチモードフィルターとしての基本機能に、レゾナンスのクリッピング/デプス切り替え、メイン出力へのディストーション、位相反転、そして各フィルタータイプの個別出力と、音作りの幅を広げる機能を数多く備えたモジュールです。次回のEP.2では、これらのコントロールを実際に使いながら、フィルタータイプごとの音の違いや、出力をミックスした応用的なパッチ、自己発振を使った音源としての活用までを解説します。
なお、本記事で参照しているデモ動画はADDAC Systemの公式動画です。実際の音や操作の様子はぜひ動画でご確認ください。
ADDAC705 商品詳細
ADDAC705 VC Stinggy Filterの商品詳細は以下よりご覧いただけます。

